15.残されたものを追って





 空は、皮肉なほどに晴れ渡っていた。
 前日の西部での雨がまるで嘘のようで、いつも通りのセントラルの夕焼けがやけに眩しく感じた。

 中央司令部に少しだけ立ち寄り、昼過ぎに葬儀が終わった事を告げられる。暗い表情で告げてきた受付嬢に、何と返したのかは覚えていない。
 自宅に寄ることもなく、はその足でセントラルの市街を歩く。
 いつもと変わらない街並み。いつもと変わらない人々の行き交う姿に声。いつもと変わらない見慣れた景色の中に、自分だけが取り残されたように錯覚する。
 非現実感。まだ、自分は夢か何かを見ているのだろうと、そんなことを考えてしまう。早く夢から覚めたいのに、頬を撫ぜる風も、石畳を踏みしめる感覚も、確かに現実のものだった。
 ああ、やっぱり夢じゃないんだ。
 認めたくないのに、いつまでも現実逃避をし続ける程自分は子供ではなかった。子供だった方が幸せだっただろうか。子供であれば、この喪失感も感じることはなかっただろうか。
 ふと視界に入った花屋に足を向け、いつも通りの調子で小さな花束を一つ買う自分を、他人事のように見ているのも確かに自分だった。

 やって来たのは墓地だった。
 少し歩き回り、目当ての真新しい墓石を見つける。墓石に置かれた花輪もまだ新しい。
 刻まれているのは『マース・ヒューズ』という、見覚えのある名前。
 この石の下に、つい昨日までは生きていた友人が眠っているだなんて信じられなかった。否、信じたくなかった。
 何度名前を確かめても、それは確かに友人の名前に間違いない。それでもやはり信じたくないと未だに思い続けている自分が馬鹿馬鹿しかった。
 は、深く息を吐いた。

「遅くなってごめんね」

 少しだけ微笑んで、はいつも通りの声音で言った。
 葬儀に間に合わなくてごめん、と。最期に見送ることができなくてごめん、と。
 は少し屈んで、花輪の手前に買ってきた花束を置いた。十年以上の付き合いで、初めて彼のために買った花束だった。そんな初めてがまさかこんな形で捧げる物になるとは、まったく笑ってしまうではないか。ふっと浮かんだ笑みは自嘲でしかなかった。
 墓の前に腰をおろし、脇に荷物を置いて胡坐をかく。
 昼過ぎに終わった葬儀の後、もう人は残っていない。ヒューズの墓の前にいるのは自分だけ。夜が近付き、少し冷たくなった風がとヒューズの墓の間を流れた。

「殉職で二階級特進……マース・ヒューズ准将……か」

 軍人などの職務階級が明確な職業において、殉職に伴って在職階級から二階級昇進される制度がある。名誉、叙勲、その他の遺族に対する補償も特進した階級に基づいてなされる。

「ロイの方が先に追いついてくるかと思ったら……あんたは死んで、いきなり将官に昇進かい」

 そう呟いて、息を吐く。

「ロイの下で助力するって言ったり、私の結婚式の手伝いするって言ったり……全部中途半端じゃないの」

 ほんの数日前だ。エリシアの誕生日パーティーで、心から幸せそうに笑っていた笑顔を思い出す。
 彼女が出来たんだと嬉しそうに話してきたのは何年前のことだったか。そうして結婚して、子供が生まれて。いつ話をしても、二言目には必ずといっていい程、お決まりの家族自慢が始まった。
 そんな男が、愛する妻と娘を泣かせたのだ。

「一番家族の幸せ考えて生きてきた男が……大好きな家族悲しませてどうするの」

 そんな事、今更言っても仕方が無い事はわかっている。家族にそんな想いをさせてしまって、一番悔しいのはヒューズ本人であろう事もわかっている。

「昨日の電話で、『お前も家族みたいなもんだろ』って、そう言ってくれたの覚えてる?」

 小さく笑って、問いかける。

「……嬉しかった」

 ありがとう。
 ……昨日の電話で、素直にそう言えたら良かったのに。今になって思ってももう遅いけれど、本当は、すごく嬉しかった。今程、素直に言葉を言えない自分を後悔したことは無かったかもしれない。
 誕生日は毎年必ず祝ってくれた。自分が国家錬金術師の資格を取った時、まるで自分ごとのように喜んで祝ってくれた。昇進した時も祝ってくれた。
 家族がいなくてずっと一人ぼっちだった自分を、まるで本当の家族のように思ってくれていた。
 じわりと視界が滲むが、堪えることはしなかった。頬を、涙が伝う。

 ほら、ここにも一人、貴方の死を悲しんでいる家族がいるよ。

「マースっ……」

 呼びかけに応えるように風が吹いた。
 花びらが、綺麗なオレンジ色の空に舞い上がった。


 それからしばらく、はその場に座り込んだままだった。太陽の位置は随分と低くなり、辺りは薄暗くなってきていた。
 背後で足音が近付いて来るのが聞こえ、はゆっくりと立ち上がった。頬を濡らした涙はもう乾いていた。

「まだ帰ってなかったんだ」

 は振り返らずに、声をかける。

「次の汽車で帰る。その前にもう一度……と思ってな」

 予想通りの人物から言葉が返って来た。
 振り返ると、礼服姿のロイが立っていた。
 そう、と短く返し、はまたヒューズの墓へと目を戻す。
 立ち止まっていたロイが近付いてきて、の隣へと並んだ。風に吹かれて冷え切った体の片側に、ほんのりと温もりを感じた。生きている人間の、あたたかみ。

「死なないよね」

 言葉は、無意識に零れ落ちた。

「ロイは、死なないよね」

 ヒューズの墓を見つめたまま、問いかける。

「死なないさ」

 返答はすぐにあった。
 隣に目を向けると、ロイはと同じようにヒューズの墓を真っ直ぐに見つめていた。

「私にはまだやるべき事がある。こんなところで死んではいられない」

 揺らぐ事の無い黒の瞳は、親友の死の悲しみを越え、既にその先を見据えている。

「ははっ、私と同じだ」

 思わず笑みを浮かべた。はヒューズの墓へと視線を戻し、深呼吸する。
 指先が冷えていることに気が付き、両手をコートのポケットに入れた。そして、五感と思考が自分と一致するような感覚。
 ようやく、現実に戻ってこれたような気がした。

 大丈夫だ。もう一人の「兄」は、死んだりしない。きっと。

「今、中央は人手不足でね。私を中央に戻すかどうかって審議してるんだって」

 いつも通りの口調で、は言う。

「生意気だから一緒に仕事はしたくない。でも、実力的には戻すべきだ、っておっさん達がごちゃごちゃ言ってるんだとさ」
「戻りたくないんだろう?」
「んー……まあね」

 別に戻りたくないというわけではないが、まだ国内のたくさんの地域を見て周っていたいのは確かだ。各支部の監査を少将という地位にいる自分が行なっているのは、国内の情勢、街の状況、そういったものを人伝ではなく自分の目で見たいからだった。だから、まだ戻る気は無かった。

「ロイの事推薦しとこうと思うんだけど。どう? 異論ある?」

 隣に目を向け、問いかける。
 ロイは驚いたように目を丸くした後、ふっと笑みを浮かべた。

「少将殿直々に推薦頂けるとはな。異論などあるわけがない。願っても無いチャンスだ」
「言うと思った」

 も笑って肩を竦める。
 ロイがそう答えるだろうことは予測できていた。彼が目指すのは上層部よりももっと上であることをは知っている。

「気をつけなよ。あんたの歳で上層部に食らいついたら、敵が増えるからね」
「わかっているさ」
「でも、大丈夫」

 は言う。

「あんたには慕ってくれる優秀な部下がいるし……こんなに素敵な上司もいるんだからね」

 そう言うの笑顔は、いつも通りののもの。
 不意をつかれたような表情でを見たロイは、すぐに眉を下げて笑った。

「……まったく。頼もしい限りだ」

 支えてくれる人間は一人でも多い方が良いと、そう助言をした本人が先に逝ってしまった。
 けれど、まだ味方はまだいる。部下も、そして上司も。

 約半月ぶりに同じ場所へと集まった三人だったが、最初から最後までずっと、一人は無言であった。




 イーストシティへ帰るロイとは途中で別れ、はそのまま中央司令部へと戻った。
 自分の執務室へ行き、荷物を自席へと置いていく。自分の机と部下の机が二つあるだけの小さな執務室に、自分以外に人影は無い。二人の部下は就業時間を終えてまで残っているほど仕事熱心ではないのだ。予想はできていたが、相変わらずの様子に思わず息を吐く。
 はそのまま司令部を出て、軍法会議所へと向かった。擦れ違う人は皆、自分を見て表情暗く挨拶をしていく。
 だが、そんなの目に悲しみはもう無かった。

「やあ、フォッカー大尉」
将軍!」

 ヒューズ達の仕事部屋を訪ね、そこにいた男には片手を上げて挨拶をする。突然の来訪者に、フォッカーは驚いて立ち上がり敬礼をした。楽にしていいよ、とはひらひらと手を振る。
 そして、もう一人見知らぬ女性がいることに気が付いた。

「それと、えーと……?」
「あ、初めまして! 私、シェスカと申します」

 丸い眼鏡をかけた女性が、慌てて背筋を伸ばした。

「鋼の錬金術師のエドワードさんはご存知ですか? その方が、働き口を探していた私をヒューズ准将に紹介くださって……それで、先日から働かせて頂いています」
「そっか」

 どうりで知らない顔のはずである。エルリック兄弟がセントラルに来てからならば、まだ働き始めて数週間も経っていないだろう。

「いつ中央にお戻りになられたのですか?」
「さっきだよ」

 フォッカーからの問いに簡潔に答える。葬儀に来ていなかったことは知っているのだろう。が普段中央司令部にいない事はフォッカーも知っている。昨日ヒューズに電話した後に、彼からが来週帰って来るという話を聞いたのかもしれない。

「それで。聞きたい事があるんだけど」

 スッと表情から笑みを消し、は切り出す。
 フォッカーは静かに頷いた。

「ヒューズ准将の事……ですね」
「ロイ……マスタング大佐に少しは聞いたんだけどさ」

 言いながら、ヒューズの執務机に目を向ける。グレイシアとエリシアの写真が写真立てに収まっているのが見えて、少しだけ眉を寄せた。
 ロイと別れるまでの間に、彼が仕入れた情報はすべて聞いていた。

「急に思い立ったように資料室に行き、何者かと争った。そして怪我をしたまま電話をかけようとしたけど、結局どこにもかけずに外の公衆電話へ行き東方司令部へ電話をした。……そして殺された、と」
「その通りです」

 ロイから聞いた話と相違は無い。
 ふむ、とは腕を組み、片手を自身の顎へと添えた。

「資料室に行く前、二人もここにいたんだよね? 何か話をしてたの?」

 ヒューズは急に思い立ったように資料室へ行った。何かきっかけになる事があったはずだ。
 はい、とフォッカーは答えた。

「ヒューズ准将が読んでいた新聞の話をしていましたね。ただの雑談でしたが……ええと、確か……」
「リオールの暴動がやっと治まった、って話ですよ」

 思い出そうとしているフォッカーに、シェスカが言った。
 の目つきが変わる。

「そうそう。そして、東部以外でも暴動や国境戦が起きている、と。こんな話をしていました」
「その話をしていたら、急に資料室に行くと言って出て行った?」
「そうです」

 リオールは東部にある町の一つだ。レト教という奇跡を起こせるという宗教が広まっていたが、教主のペテンがたまたま居合わせたエルリック兄弟によって明るみに出た。それにより、今までその宗教を信じていた町の人々が騙されたと言って教会へ押しかけ、やがてそれは暴動にまでなってしまった。元々は東方司令部が鎮圧のために兵を派遣していたが、途中で指揮権が中央司令部へ移ったということは聞いている。
 その暴動がようやく治まった。ヒューズの死の前の行動は、その話がトリガーとなった事は確かなようだ。

 フォッカーとシェスカに礼を言い、は執務室から資料室へと移動する。
 資料室の前には立ち入り禁止のロープが張られており、見張りのための兵が一人立っていた。に気付いて敬礼する兵に、入りたい旨を伝えると、ロープを外して中へと通してもらう。

「ということは、ここでは各地の内乱や暴動の事件記録を見てたってわけか……」

 誰もいない資料室で、は一人呟く。
 机の上には地図と事件の記録資料が数冊、乱雑に散らばっている。
 机と床に付着した血痕と、散らばった足下の紙を見つめる。事件の記録をこの机で見ていたのだから、この血はヒューズのものに間違いない。

「で、誰かと争った、と……ん?」

 部屋を見回して、部屋の角に目が止まる。
 床に積み重ねられていたのであろう本や紙の資料が崩れ落ちていた。ヒューズがいたであろう席からは離れている。自然に崩れたわけではなさそうだ。
 はそこに近付き、膝をついた。

「……血痕がもう一箇所……?」

 床には確かに血が残っていた。
 は眉を寄せる。
 ヒューズはこの資料室で誰かと争った。恐らくヒューズがいたのはあちらの机。そして、ヒューズを襲った誰かは、ここにいた。犯人も怪我を負ったのであろうことは間違いない。ヒューズは投げナイフの使い手だ。この程度の距離であれば、的を外す事など無いことをは知っている。
 は立ち上がると、資料室の入口へと戻る。

「ねえ。昨日の夜、誰か銃声を聞いた人はいた?」

 見張りの兵へと問いかける。兵は首を振った。

「いえ。そのような話は聞いていません。事件があった時間はまだ人は多く残っていましたし、発砲があったなら誰かしら聞いているはずです」
「そうだよね……」

 少し考えた後、ありがとうと兵に告げる。
 そしては資料室を後にし、そのまま軍法会議所も出て行った。

 夜道を一人で歩きながら、思考を巡らせる。
 相手は飛び道具を持っていたのだろうか。
 は資料室を見るまで、ヒューズと敵は至近距離で争ったものだと思っていた。だが、現場を見ると二つの血痕は離れた場所にあった。銃声は誰も聞いていない。となると、ヒューズが持っているような飛び道具など、離れた場所への攻撃を音も無く行なえる武器の可能性が高いと結論付ける。

 ロイは言っていた。ヒューズの死には『賢者の石』が関わっており、犯人は恐らく複数人の組織。そして、軍の上層部が関連していると。
 犯人の目星はついているが何処の誰かはわからない。アームストロングから引き出せた情報はそれだけだった、とロイは言っていた。上官であるロイが「話せ」と言っても、アームストロングは「話せない」と言った。それは、ロイよりも上の地位である者から口外しないよう命令をされているためだ。つまり将官以上、軍の上層部だ。

 ヒューズは賢者の石についての何かを知ってしまった。だから口止めに殺された。そう考えるのが妥当だろう。これは、とロイで一致した意見だった。
 賢者の石はエルリック兄弟の探し物だ。恐らく先日のエドワードの怪我も、第五研究所に忍び込んだのも、賢者の石関連だろう。
 だが、アームストロングは詳細をに話そうとはしなかったし、エドワードも「聞かないでくれ」と言った。あれは口止めされていたわけではなく、彼ら自身が話すべきではないと判断したものだろう。話すべきではない何かを知ってしまった。
 第五研究所の責任者にも話を聞くことができれば、もう少し情報も得られたかもしれないが、責任者であるバスク・グラン准将は先日スカーの手により殺害されてしまっている。

 ヒューズが最後に東方司令部へと電話をかけた電話ボックス。そこにも、軍法会議所の中と同様、立ち入り禁止のロープが張られており、見張りの兵が立っていた。の姿を見て兵が敬礼する。
 は兵にヒューズの死体が見つかった時の状況を問いかけた。
 ヒューズはここで、電話を背にした状態で死んでいるのが見つかった。応戦しようとしたのか、右手にはナイフが握られていた。血溜まりの中には、彼の家族写真が落ちていたという。
 電話ボックスの中には、拭われてはいるものの、完全に消えることのなかった血が残っている。
 ここで、ヒューズは死んだ。

「……」

 コートのポケットに入れられた拳が、固く握り締められた。

 ただ電話をするだけならば、軍法会議所の中からでも出来ただろうに、わざわざ外に出なければならなかった理由は何だ?
 所内で周囲に人がいる状況で、聞かれると問題がある内容だった。あるいは盗聴を恐れたか。そのような内容の何かを、ロイへと伝えようとした。
 ヒューズは最後に「軍がヤバイ」と言っていたということを、東方司令部の電話交換手が聞いている。
 軍の上層部が関連している、何らかの組織。賢者の石。各地の暴動。「軍がヤバイ」という言葉……。
 バラバラのピースしか存在せず、何の繋がりもまだ見えない。

 ふと、は視線のみを後ろへと向けた。
 誰もいない。

 は電話ボックスをもう一度だけ見つめると、また歩き出した。




 しばらく歩いてがやってきたのは、人通りの無い路地だった。切れかけた街灯がチカチカと点滅している。

「さて……と」

 そこで足を止め、は息を吐いた。

「そろそろ出てきたら? バレバレだよ」

 誰もいない静かな空間に、その声ははっきりと響いた。
 少しして、ヒールが石を打つ音が近付いて来る。

「……なーんだ。バレてたのか」

 落ち着いたその声は、の背後から聞こえた。
 路地の影から、一人の女が現れた。
 が振り返る。
 そこに立っていたのは、長いウェーブのかかった黒い髪に黒い服の女だった。胸元には己の尾を噛んで環となったヘビの模様……ウロボロスの刺青。

「軍法会議所からずっと尾けてたでしょ」
「あら。そんな前から気付いてたの?」

 先程とは違い、驚いた声で女は言った。

「伊達に将軍という地位にいるわけではない、って事ね」

 女は愉快そうに口元に笑みを浮かべた。
 そして、に背を向けた。

「何か気が付くかと思って尾けていたけど、大してわかったわけではないみたいだし。今日はこの辺で帰る事にするわ」

 女は片手をひらりと振って、に背を向けて歩き出した。
 バチィッ!
 錬成反応の音と光と共に、女の行く手を氷の壁が遮った。

「逃がすかよ」

 が右手を女へと向けていた。
 女は目の前に作られた壁を見た後、ゆっくりと振り返った。

「……見逃してあげるって言っているのに」
「あんたには洗いざらい吐いてもらうよ。マースの殺害について……そして、」

 一度視線を落とし、は女を睨み付けた。

「賢者の石と、各地で起こっている暴動の関連についてもね」

 女は一瞬目を瞠ると、再び笑みを浮かべた。

「頭の回転が速すぎると早死にするわよ。少将」

 の目つきが変わった。
 確信する。この女が、ヒューズの殺害に関わっている組織の一人であると。
 女は短く息を吐いた。

「怖い顔。……いいわ」

 一度目を瞑り、再び目を開けてを見る。
 先程とは全く違う目。
 女――ラストは、楽しそうに口角を上げた。

「遊んであげる」